糖尿病網膜症の治療
〇糖尿病とは
血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態、すなわち高血糖状態が続く病気です。糖尿病には1型と2型のふたつのタイプがあります。日本人の糖尿病のほとんどは2型糖尿病で、これは生活習慣病の一種です。糖尿病患者は現在の患者数は740 万人、予備軍まで入れる1,620 万人といわれており、5年間で250万人の患者数増加しており、徐々に増加傾向です。
〇糖尿病網膜症とは
糖尿病により、目の奥にある網膜(カメラに例えるとフィルムにあたる部分)の毛細血管が傷ついて起こる病気です。糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の上位(平成17年では第2位)をしめており、糖尿病網膜症によって、毎年約2千人ほどが社会的に失明していると言われています。糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれています。
網膜症には病期があり単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と3段階あります
・単純網膜症:毛細血管瘤、網膜出血、白斑がみられます。ほとんど自覚症状はありません。
・前増殖網膜症:無灌流領域がみられます。多くの方は自覚症状がありません。
・増殖網膜症:多量の網膜出血、硝子体出血、網膜剥離などみられます。
また、病気にかかわらず網膜の中心に当たる黄斑部と呼ばれる場所がむくんでしまう糖尿病黄斑浮腫というものがあります。黄斑浮腫をきたすとものが歪んで見えたり、視力が低下したりします。
正常:真ん中が凹んでいる
黄斑浮腫:真ん中側膨れている
〇治療について
糖尿病網膜症は糖尿病の合併症の一つですので、血糖値のコントロールが病気の進行を防ぐ有効な治療になります。
病期によって治療法が異なりますが、初期の段階であればレーザー治療で抑えることが可能ですが、進行した場合には目の奥の手術(硝子体手術)が必要になることがあります。
また、黄斑浮腫を発症した場合にはステロイドや抗VEGF薬を眼内へ投与する必要があります。
糖尿病網膜症は、病気が進行しても自覚症状がほとんどない場合があります。自覚症状を認めていなかったり、検査で異常が見られなかったからといって、定期的な検診を怠るケースがあります。
その場合は、知らないうちに、かなり進行していることがあります。定期的な検診を受け、日々の健康管理をしっかりすることが最善の治療といえます。